営業成績の見える化で実現した1人あたり売上5.75億円の秘密

あなたは「営業は属人的」という常識を疑ったことはありますか

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医薬品業界における営業マン1人あたりの平均生産性は、約2.43億円と言われています。業界トップの中外製薬でさえ、1人あたり約5.28億円です(2026年1月現在の最新データ調べ)。

しかし、私が率いた組織では、1人あたり平均5.75億円。最大値では8億円を超える営業マンも輩出しています。

「どうせ、スーパー営業マンがいるだけでしょう?」

そう思われるかもしれません。実際、私も10年前、営業未経験で35歳という年齢で営業本部長に就任したとき、周囲からは「絶対に潰れる」と噂されていました。売上30億円程度の地方の小さな診断薬メーカー。業界からは殆ど見向きもされない存在でした。

しかし10年後、売上は184億円(就任時の6倍以上)。営業部員は11人から33人に増えました。そして何より、離職率はほぼ0%です。

この結果は、一部のスーパー営業マンに依存したものではありません。

「属人化を排除する仕組み」を作り上げた結果なのです。

本記事では、私が2015年から10年間で構築してきた「営業の仕組み化」について、中小企業の経営者やマネージャーの皆さまに、実践的な内容をお伝えします。

かつての私と同じように、「このままでは会社が成長できない」と悩んでいる方々に、少しでもヒントになれば幸いです。

なぜ中小企業は属人化に陥りやすいのか?

まず、正直に申し上げます。属人化は中小企業にとっては避けられない現実です。

私自身、営業本部長に就任した当初は、完全に属人的な営業組織でした。そして、それには明確な理由がありました。ここでは大きく4つほどその理由を挙げてみたいと思います。

構造的要因①:リソースの制約

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中小企業には、大企業のような潤沢な教育予算がありません。体系的な研修制度を作る余裕もなければ、専任の人材育成担当者を置くこともできません。

結果として、OJT(On-the-Job Training)という名の「見て覚えろ」文化が定着します。トップセールスマンの「背中を見て学べ」という言葉は、聞こえは良いですが、実態は教育システムの不在を意味しているのです。

私自身が営業未経験だったこともあり、11人の営業部員を抱えながら、「とにかく売れる人が何をやっているのか」を見て学ぶ数年間を過ごしました。

構造的要因②:即戦力への期待

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中小企業には、育成期間を待つ余裕がありません。「すぐに売ってくれ」というプレッシャーが常にあります。

中途採用者には特に「来月には即戦力」という期待が重くのしかかります。そのため、個人の過去の経験や勘に頼らざるを得ず、組織としての標準化が進まないのです。

私自身、就任当初は長期的な人材育成よりも、短期的な売上を優先させていましたし、実績の良くない営業部員のエリアには表敬訪問とかこつけながら積極的に押しかけて、トップ営業としてフォローアップするようなやり方を繰り返していました。おそらく、多くの中小企業の社長さんや営業部長の皆さんは、数字作りのために少なからずこういった活動をされているのではないでしょうか。

構造的要因③:優秀なセールスマンほど教えたがらない問題
最も大きな問題がこれです。

トップセールスマン本人が、「なぜ自分は売れるのか」を教えたがらないのです。

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そこには「どうせ教えてもできない」とか「口で教えられるものじゃない」「自分で失敗して、苦労しながら学んでいくものだ」などなど、色々な想いがあってのことだろうと思います。

実際、私も部下である歴戦の営業マンに若手に教えてやって欲しいと頼んだことがありますが、上述のようなことを言われて断られた経験があります。

「営業職は一日にしてならず」という彼らの言い分も良くわかるのですが、職人芸さながらの「感覚」「勘」「経験」という言葉で片付けられては、やはり属人化からは抜け出せず、再現性のある「仕組み」になりません。

本当に強い営業組織を創りたいのであれば、彼らの暗黙知こそ、仕組み化しなければならないのです。

構造的要因④:毎日が忙しすぎる問題

私自身もそうでしたが、おそらく多くの中小企業の経営層、管理職の方々はそうなのではないでしょうか。

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「仕組み化したい」と思っていながら、日々の忙しさや短期的な数字へのプレッシャーに囚われて、仕組み構築を後回しにしてしまうのです。結果として、場当たり的な営業活動が繰り返され、属人化がますます深刻になっていきます。

猫の手も借りたと思う程の目まぐるしい毎日では、当然、先のことには手が回るはずもありません。

私がこの会社を立ち上げた理由の一つは、こういった切実な問題をお手伝いしたいという思いからです。

・属人化がもたらす「3つの破滅シナリオ」

さて、こういった中小企業特有の要因は避けられないとしても、そのせいで属人化を放置するとどうなるのか。ここからは、私が10年間で見聞きした、あるいは自ら経験しかけた「破滅のパターン」を3つ程ご紹介しておきます。

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破滅①:キーマン退職による売上崩壊

これは知り合いの経営者が、まさか!という事態に陥った話です。ある日、売上の20%を担う営業マンが深刻な顔をして退職届を持ってきたのです。どんなに引き留めても、想いは変わらず、結局わずか1ヶ月後に退職となりました。当然のことながら、顧客リストは残っていてもお客様との関係性は消失します。

最初の年、売上は3割減だったそうです。

中小企業にとってこれはかなり深刻なダメージです。

隠さずに言いますが、私も就任から数年間はこの恐怖と戦っていた一人です。「いま、もしトップセールスマンが辞めたら・・」その不安を常に抱えながら必死で過ごしていた日々を思い出します。

破滅②:拡大不能の罠

「新規採用しても一年経たずに辞めていく。定着率が30%しかない」

これはよく聞く話です。「売れる人」だけが残り組織が拡大しないため、トップセールスマンへの依存が増大し、結果、トップセールスマンがある日突然、バーンアウトしてしまう。

私は運よく、こういったことは経験しませんでしたが、安定した会社経営をする上でこれは絶対に避けなければなりません。

「売れる人が残っているならいいじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、ここで重要なのは「(ノウハウ非公開の)売れる人」しかいない営業部隊は絶対に作ってはならないということです。

他の人が引き継げない手法は、それがどんなに圧倒的な売上を叩き出す方法であったとしても、その人がいなくなったら終わりです。

特に社長がトップセールスマンの場合は、経営破綻に直結する大きなリスクを負っている状態といえるでしょう。

破滅③:組織内の分断

「売れる人」と「売れない人」の二極化が進むと、組織の雰囲気が悪化します。嫉妬と諦めが蔓延し、チームワークが崩壊します。優秀な人材ほど孤立し、結局は去っていきます。

「あの人だけ特別扱いされている」という不満の声。

これを放置すれば、組織は内部から崩壊します。私の元部下で他社から転職してきた人の中には、これが転職理由だった人もいました。

では、どうすれば属人化を排除できるのか。ここからは、私が10年間かけて構築してきた「教育システム」を、包み隠さずお伝えします。

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・属人化を排除する「教育システム」の全体設計

①:採用段階からの仕組み化

属人化を排除する第一歩は、実は採用段階から始まります。

自己管理能力の見極め

私が率いた営業部隊のスタイルは、直行直帰が基本です。転勤もありません。住んでいるエリアで活動してもらいます。

このスタイルで機能するのは、自己管理能力が高い人材だけです。

具体的には、以下の3つの特性を持つ人材です。

  1. 自分で目標設定できる:言われなくても、自分で「今月はこれを達成する」と決められる
  2. 時間管理ができる:誰も見ていなくても、計画通りに動ける
  3. 報告・連絡・相談を自発的に行える:困ったときに、自分から声を上げられる

先に言っておきますが、面接だけでこれらを見極めることは困難というか、ほぼ無理です。

どんな会社でも自社の業務に合う人材を面接で見定めたいと思う事でしょう。ですが、面接に絶対の自信を持つ面接官でない限りは、残念ながら面接で分かるのは表面的なことだけだと思った方が良いでしょう。

一方で、自社が必要とする具体的な能力や知識について、面接で本人に確認しておくことは、採用後のお互いにとって重要な事実となりますので、必ず聞いておくことをお勧めします。

ちなみに、私が採用面接で見ていることは①服装、②髪型、③所作の三つです。①②は人からどう見られたいと思っているのか、またどういう性格なのかが分かりますし、③はその人の丁寧さがわかります。そして何より言葉では嘘はつけますが、この3つは嘘をつけないからです。

面接で大切なのは、如何に「自己中心的な人物を採用しないか」です。この一点がクリアできれば、属人化の排除は7割成功と言っても過言ではありません。

一方、属人化の排除とは趣旨が異なりますが「指示待ち人間」も中小企業は採用すべきではありません。

指示待ち人間の面接時の特徴は「聞かれたことしか答えない」「話が膨らまない」です。

面接で必ず伝えたこと

面接の補足ですが、私は採用面接で必ずこう伝えます。

「うちの会社は、営業活動の自由度が非常に高いです。転勤もありません。住んでいるエリアで、あなたのやり方で営業してください。あるのは目標とする数字だけです。もちろん達成が前提です。ただし、皆が全力でフォローアップしますし、決して一人にすることはありません。そして、全責任は私が取ります。」

この「自由」と「非放置」と「責任は上司が取る」の3点セットは、特に優秀な人材を引き寄せます。

②:入社後3ヶ月の習得期間

採用した人材を、最初の3ヶ月でどう育てるか。これが属人化排除の重要ポイントです。

STEP1:業界・製品知識を体系的に習得してもらいます

まずは知識のインプットです。

入社後1ヶ月程度をかけて、業務に必要な知識を学んでもらいます。

知識は主に次の二通りがあります。

A)社内知識

社内のあらゆる仕組み、人、業務に関する総合的な知識です。
自部署以外の知識は不要という考えもあるかもしれませんが、私はそうは思いません。
むしろ、他部署がどのような業務を行っていて、会社はどのように機能しているのかという全体観を養うことは、実務に深みをもたらすには絶対に必要なことだと言えるでしょう。自社の製造ラインを持っている会社は、入社研修として1週間でも良いので製造現場を経験させることをお勧めします。

B)社外知識

業界特有の知識、営業ノウハウ、競合製品との差別化ポイント。これらを学んでもらいます。
学んだ知識のテストもやりますが、厳しいものではなく確認テストです。
特に、自社製品の特長は競合他社との比較において学んでもらうようにしています。なぜなら「お客様は常に比較している」からです。

STEP2:実践的な同行営業での「様々な営業スタイル」を見せます

次の1ヶ月では、現場研修をおこないます。

この目的は「比較」です。

最低3人以上の先輩たちと営業同行を行います。期間は先輩一人に対して1週間。そして、あえて年齢、営業スタイルが異なる先輩営業マンを選んで同行してもらいます。

先輩営業マンには「自分のやり方を包み隠さず見せてやって欲しい」と先に依頼しておきます。そして、同行中の一切は担当する先輩に一任します。そうすることで、良くも悪くも色々なやり方があることを経験してもらうのです。

STEP3:実践へ

  3ヵ月目はいよいよ実践です。

  実際に担当エリアを持ってもらい、自由に営業活動をしてもらいます。

  この時に重要なのは「繋がり」です。

  「自由に」と書きましたが、実際に営業を始めてみるとすぐに色々な課題に直面します。その時に、STEP2でお世話になった先輩をはじめ、STEP1で繋がった方々に助けを求められる環境を作っておくことが大切です。電話、メール、チャット、LINE。方法は何でも構いません。

何かあってもすぐに相談ができて、助けてくれる仲間がいると実感できることが重要です。

  ちなみに、私はSTEP2で同行した先輩方に何もなくても1週間に一度くらいの間隔で連絡してやって欲しいとお願いしていました。 これらSTEP1~3を経ることで新人は自社のスタイルを知り、共有することの大切さを、身をもって学びます。そして、それことが属人化排除の重要ポイントなのです。

③:独り立ち後の継続的成長支援

3ヶ月が過ぎ、完全に独り立ちした後も、成長支援は続きます。

「決めてもらう」マネジメント

私が最も重視していたのは、定期的に組んでいる2ヶ月に一度程度の私との営業同行です。

同行の名目はあくまでもお客様への表敬訪問であり、営業マンの様子見ではありません。

そして、ここでのルールはただ一つ。「全ては部下に決めさせる」です。

当日の待ち合わせ場所、時間から始まって、同行先や移動ルート、お昼ご飯や夜の接待、宿泊場所など、同行に関する全てにおいて段取りをしてもらいます。そして、それについての評価は何も伝えません。

当然、面談もするのですが、その際はまず、現状を報告してもらってから課題を言ってもらいます。

そして、最後にこう聞きます「で、どうしたいですか?」

優秀な営業マンは課題解決に向けた施策をこれでもか!というくらい、しかも的確に言ってきます。そうでない営業マンだと色々話はするものの、結論「どうしたらいいか分からない」という話になります。ですがその場合、「状況整理ができていないのだ」として、一緒に状況を整理して方向性を示せるようにしていきます。そして、最終的にどうするかは、部下に決めてもらうようにし向けていきます。

数字はあくまでも「目安」として使う方が良い

話は少し変わりますが、営業現場では必ず目標と実績という2つの数字から逃れることは出来ません。

ですが私は、数字で縛ることは絶対にしませんでした。

もちろん目標数値は共有しますが、「だいたいこのくらい」という感覚を大切にします。

会議や議論の場など、どうしても細かな数字が必要な場合を除き、営業マンとはできるだけ数字の会話はしません。

よく「数字で語れないのは実力がない証拠だ」という意見を聞きます。確かにその通りかもしれません。ですが営業マンは誰しも自分の数字は自分が一番良く分かっています。良い場合はともかく、パッとしなかったり、悪かったりする時に数字で語られるのは、営業マンにとっては退路と閉ざされたネズミと同じ状況に置かれることを意味します。

窮鼠猫を嚙むとはよく言ったもので、営業マンを追い詰めても良い事は一つもありません。

世の中には「追い詰めてからの奮起を期待する」という手法もありますが、私は実体験として「往々にして期待は裏切られる」を支持します。なので、私は、「今月の数字は?」ではなく「最近どう?」と聞きます。「目標達成率は?」ではなく「手応えは?」と聞くようにしていました。

④:組織全体での「共有」の文化づくり

最後に、組織全体で「感覚」を共有する文化の作り方をお伝えします。

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A)飲み会・懇親会の推奨

月1回、最低でも2ヵ月に1回は部下と飲みに行きます。これは会社負担をお勧めします。

目的は、部下の不満や愚痴を聞くことではありません。

同じ空間で時間を共有し、自分と部下の考えを共有し、非言語コミュニケーションで繋がることです。

飲み会では、仕事の話もしますが、それ以上に「相手の世界」を知ることが重要です。趣味、家族、価値観。これらを知ることで、「寄り添い」が生まれます。

B)成功と失敗事例の共有

四半期毎の年4回(最低でも年2回)は営業会議を行い、そこで成功事例を共有します。

「何をしたか」だけでなく「何故それをしたか」から、クロージングまでの具体例を共有してもらいます。

そして、成功事例よりも重要なのは失敗事例の共有です。

いわゆる成績の悪かった営業マンに、あえて全員の前で自己分析をしてもらいます。これを行うと、営業全体に適度な緊張感と超実践的な営業ノウハウの共有ができるようになります。

ただし、これは一歩間違えれば組織の人間関係を壊しかねない猛毒です。

これができるのは先に述べたSTEP1~3を経て、組織として「絶対に見捨てない」風土が出来上がっていることが大前提ですので、気軽な気持ちでやっては絶対にいけません。

C)失敗を責めない文化

そして、特に重要なのがこれです。

「失敗を責めるな、むしろ凝視して、自分たちの世界を広げろ」の一言です。

確実に言えることは「失敗は経験である」ということです。

「なぜ失敗したか」より「何を経験したか」また、「そこから何を学んだか」を大切にします。

ついでに、失敗の責任は上司が取るから大丈夫!という雰囲気を作っておくことで、失敗をポジティブに受け止める文化が出来ます。

これができると、部下は勝手に自ら考え、行動し、成果に向けて試行錯誤するようになり、更にそれを共有することを是とすることで、属人化は排除され、結果として「強い営業部隊」が完成していきます。

結果としての「5.75億円」

これまで述べてきたやり方を私は10年間かけて構築してきました。

その結果、冒頭でお伝えした数字が実現しました。

営業部員は11人から33人へ拡大。最大値8億円を超える営業マンも輩出しています。

業界トップの中外製薬の5.28億円を超える、一人あたり平均5.75億円。

なぜこれが可能になったのか。

それは、「仕組み」と「人間力」を融合させたからです。

属人化を排除しながらも、「個」を活かす。これが、私の作り上げてきた組織の強みです。

さて、ここまで読んでくださり、私の組織づくりに興味を持ってくださったのなら、ぜひ一度、無料相談にお申し込みください。

無料相談申込はこちら: https://sales-prime.effortless-consulting.com/contact/

※【1回30分】

野中 祐行(のなか ひろゆき):1978年生まれ
著者プロフィール
野中 祐行(のなか ひろゆき):1978年生まれ

2026年現在:株式会社タウンズ 専務執行役員 管掌
2015年、営業未経験で35歳にて営業本部長就任。10年間で売上を30億円から184億円(6倍以上)に成長させ、東証スタンダード市場上場に貢献。1人あたり営業生産性5.75億円(業界平均の約4倍)を実現。非言語コミュニケーションを軸とした独自のマネジメント手法で、離職率ほぼ0%の組織を構築。